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○○たんと呼ばないで
 ○○たんと呼ばないで

  キルラの被毛を櫛でとかすのは、ラウラにとって就寝前の日課であり、また楽しみでもある。
 うっとりするくらいふわふわの毛を撫でていると、ラウラまで気持ちよくなってくるのだ。
 湯浴み後のしっとり濡れた毛を優しく拭いて、完全に乾かす頃には、キルラの眼は、たいてい半分ほどの大きさになっている。眠りの縁につま先を乗せている状態のキルラだが、ここで目を閉じることは決してない。
 キルラもまた、ラウラの手によるブラッシングを、ことのほか楽しみにしているのだろう。眠ってしまってはもったいない、と思っているのかもしれない。
 今夜も、もう瞼がくっつきそうなのに、それでも目元を擦りつつ、意識を保とうとしていた。
「寝ちゃっていいよ」
 ラウラが囁くと、うにゅ、とか、むぅん、とか、可愛いがなんと言っているのかわからない言葉を呟きつつ、小さく首を横に振る。
 この、むずかりながらも、一生懸命起きていようとするキルラが可愛くてならないのだ。
 ラウラはキルラ専用のブラシを手にすると、自らのヴァハラを膝の上に乗せた。まずは掌で毛の流れを整えると、お腹の毛を撫でるように梳った。
 くすぐったいのか気持ちいいのか、仰向けのキルラの口元が、むふふとほころぶ。
 つられるようにラウラもまた微笑んで、一層優しくブラシをかけた。
 前側の毛をまんべんなくとかしたあとで、そっとキルラをうつぶせにする。
 されるがままのキルラは、もうほとんど眠っているらしい。くったりとラウラの掌に身を任せている。
「……眠っちゃったかな」
 返事は寝息だった。
 起こしてはいけないと、ラウラはブラシを置いて、掌で整えることにした。
 角の間から後頭部を何度か撫で、さらに背中の羽の間に指先を滑らせる。
 と。
「……ん?」
 ラウラは『そこ』に視線を注いだ。
 ――み、見間違い、……だよ、ね?
 我が目が映した『そこ』が認められなくて、ラウラは小刻みに首を横に振った。
 一度視界を閉じ、恐る恐る、目を開ける。
『そこ』。
 羽の間、ちょうど真ん中辺りだ。
 穴があくのではと思うほど、そこを凝視する。
 唇が微かに震えた。
 爪の先で、ふわふわの被毛をゆっくりかき分けた、刹那。
「〜〜〜……ッ!!」
 悲鳴をあげそうになったところを、必死になって堪える。
 ぎゅうぎゅうと痛いくらい口に掌を押し当てつつ、今見た衝撃の事実に、ラウラの目には微かに涙が滲んだ。
 ――う、そ。うそうそうそ……!
 ふわっふわで触り心地は抜群。一ガラン四方、百万ウィンもする最高級の布地ですら、キルラの毛の感触には敵わないだろう。
 その、純白の、美しい、キルラの被毛が。
 ハゲてる――――――ッ!
 心の中でラウラは絶叫した。
 小指の先ほどの、ごくごく小さなものだが、その部分にだけ、毛が生えていなかった。
 ――え、え、なんで、ど、どうして?
 混乱と焦燥を覚えたラウラは、必死に原因を考える。
 自分の手入れの仕方が悪かったのだろうか?
 キルラが人界にやってきて一ツ月が経つ。
 まったくそんな様子はうかがえないが、もしや人界に来たことで、多大なストレスを感じていたのだろうか?
 あるいは、人界の食べ物が合わなかった、とか?
 いやいや、ほぼ同じものを食べているサクリクスが、
「ガーディナー家の料理人がつくる食事は美味すぎてたまらんなあ」
 なんてベタ褒めしていたし、食べ物が悪いということはないだろう。
 では、何が悪かったというのだろう。
 ラウラの背中を、だらだらと冷たい汗が伝う。
 どうしよう。
 このまま少しずつ広がっていって、
 ――キルラがツルツルになっちゃったら……。
 くらり、と眩暈がラウラを襲う。
 もちろんどんな姿であろうと、ラウラにとってキルラは唯一無二の、大切で大好きな誓約のヴァハラに違いない。違いないが、あの、触り心地抜群のキルラの毛に二度と触れられなくなってしまったらと、そんな想像をしただけで、泣けて泣けて仕方がない。
「うー……」
 ハゲを食い止める手段はあるだろうか?
 たとえば食べ物とか、マッサージとか……。
 無意識のうちに、円形状の部分に毛を寄せて隠しながら、必死に考える。
「どうした」
 ふいに、低い声がかけられた。
 時刻を憚り、その声はいつも以上に静かなものだったが、ラウラは飛び上がりそうなほど驚く。
「し、将軍……!」
 声をかけてきた相手――ヒューバート・ガーディナーは、大きく開いたラウラの唇を、掌で優しく塞いだ。
 急いで膝の上で眠るキルラを見るが、起きた様子はなかった。
 安堵の息をついたラウラを、ヒューバートは軽く目を眇めて見下ろしてきた。
「どうかしたのか?」
 再度の問いに、ラウラは思わず言いかけ……だがすんでのところで、口を噤んだ。
 ――ハ、ハゲって、男のひとは避けたい単語、じゃないかな? 避けたい、よね?
 以前ヒューバートの側近、シド・エリクソン少佐が、ロムロ・バルディリスと髪のことで話していた際に、相当嫌そうな顔をしていたことを思い出す。
 そういうシド自身は、キルラのことを「ハゲたん」と呼んでやる、なんて言っていたけれど……と思い出したところで、ラウラは息をのんだ。
 ――もしかして少佐の呪い!?
 そんなバカげたことを本気で考えそうになって、いやいやまさかと、慌てて首を振った。
「ラウラ、何をしている」
「はっ、ええと、あの、な、なんでもない、んですけども……」
「けども?」
「えっと……」
 言い淀むラウラを不審に思ったのか、ヒューバートが顔を近づけてくる。
 真っ直ぐな紺碧色の瞳を前にしては、口を噤み続けるのはとても難しい。
 我知らず唇を開きかけたラウラだったが、その時膝の上で眠っていたキルラが寝返りを打った。
「うみゅ……、ラウラ」
「ん、ん? な、なにキルラ?」
「もうお手入れは終わったのかのう?」
「そ、だね。終わったよ」
「ならばアレを着るのじゃ」
 半ばうとうとしながらも、キルラは水を掻くように前肢を伸ばして、何かを掴もうとする。
「着る。……あ、着ぐるみ?」
「ぅむ。今宵は鳥がよいのじゃ」
 むふふと口元を綻ばせたキルラは、枕元に並べて置いていたラウラがつくった着ぐるみの中から、緑色のとさかのついた鳥の着ぐるみを引き寄せた。
 だがその時、ラウラはハッと息をのんだ。
 ――もしかして着ぐるみが原因!?
 そもそも極上の毛皮を持つキルラなのだから、別に衣服を身に着けなくてもいいはずだ。
 キルラが気に入ったからと、毎夜着ぐるみを着せていたのだが、もしやそれがいけなかったのではないか?
 蒸れたり汗をかいたりして、それが発散できないのは、毛にとってはよくないことなのでは……。
 そう思ったら、もうたまらなくて、ラウラはキルラの手から、とさか付きの着ぐるみを引っ張ってしまった。
「ラ、ラウラ? どーしたのじゃ?」
 今にも眠りそうだったのに、驚いたためか、キルラの目が真ん丸に見開かれた。
「あ、あのね、今夜は暖かいから、着ないで眠ったほうがいいと思うの。汗かいちゃうかもしれないし、寝苦しくなるかもしれないから」
 ラウラの苦しい言い分に、キルラはあからさまに口を尖らせる。
「今度通気性のいいのつくるから、ね!」
「む? つーきせいのいいとは、どんなものじゃ?」
「どんなのでもいいよ。キルラが大好きな、ふわふわヒラヒラのレース仕様でもいいし」
「なんと!」
 途端に目を輝かせたキルラの機嫌は、あっという間に直ったようだ。
 ああいうのがいいこういうのもよいなあ、とうっとりしつつ、次々に要望を口にする。
 内心安堵するラウラを、ヒューバートはいつもとは違うと感じているらしい。
 おずおずと上目遣いにヒューバートを見上げると、微かに首を傾げていた。
「キルラ、明日つくるから、今夜はもうやすみましょう。――将軍、おやすみなさい」
 ヒューバートは何かを言いかけたが、微かに笑むと、ラウラの額にキスを落とす。
「おやすみ。言いたくなったら遠慮はするな」
「は、はい」
 やわらかな微笑を向けられ、にわかにドキドキする胸を押さえながら、ラウラはうなずいたのだった。



          



 昨夜は慌てるあまり、ヒューバートに相談ができなかったラウラだが、起きるなり、嫌な想像がぐるぐると頭の中を回って、どうにも落ち着けない。
 ラウラのブラッシングの仕方が悪かった、あるいはストレスや食事が合わなかった、という理由ではなく、病気という可能性だってあるのではないか?
 ――あんなに元気なのに、病気ってこと、あるのかしら……。
 だが一度、病気という線もあり得るのだと気づいてしまったら、どっと不安が押し寄せてきた。
 誰に相談すればいいのだろう。
 やはりヒューバートに言った方がいいだろうか。
 あるいは、サクリクスの方がいい?
 でも、とラウラはため息をついた。
 こう言ってはなんだが、男性に、『あの』単語を聞かせるのは、どうにも勇気がいる。
 ラウラの父親も、若い頃に比べて髪が薄くなったなあ、などと無念そうにぼやいていたことを思い出す。
 恐らく『あの』話題は、男性にとっては相当な禁句なのではないだろうか。
 ――もし将軍が、……っちゃったら。
 ラウラの脳裏に一瞬よぎった想像をヒューバートが知ったなら、鉄面皮と言われる彼であっても、嫌そうに眉根を寄せるに違いない。
 ラウラはすぐに我に返ると、心の内で、おかしなこと考えてごめんなさい将軍、と速攻で謝った。
 ――やっぱり男のひとへの相談はナシ、かなあ。
 妙な遠慮を胸の内に宿しながら、ラウラはため息をついた。
 とすれば、やはり仲間であるヴァハラに訊くのが無難だろう。
 サクリクスかイム、あるいはアイネイアスに訊ねてみようとラウラは考えた。
 ところがそんな日に限って、ヴァハラと会う機会がない。
 もともとサクリクスは、自身の誓約者、ヒューバートとぴったりくっついて行動を共にすることが少ない。
 自由気ままに人界のあちこちに行っては、面白いことがあったとか不穏なことを企んでいる輩がいたとか、情報を仕入れてくる。
 今日も、サクリクスは早朝からどこかへ出かけているようで、ガーディナー家にはいなかった。
 イムの誓約者、シドは、今日は軍部で溜まった仕事を片付けてくるからと、ガーディナー家への訪問はないか、もしくはやって来ても夕刻から夜頃になるらしい。
 こちらの誓約者と誓約のヴァハラは、常に共にいるべし、という考えだから、シドが来なければ、イムだってもちろんやって来ない。
 ――アイネイアスさんに会いに、オフラ教堂に行くって言ったら、理由を訊かれるよね。
「のうのう、ヒューバート、ラウラはどうしたのじゃ? 朝から塞ぎがちじゃぞ」
「……」
 うーん、とうなるラウラの横で、キルラがひそひそとヒューバートへ耳打ちをしている。
 その声が聞こえてきても、ラウラは悩みの底から浮上することができない。
 はぁ、と今度はため息をついてしまう。
 すると、ラウラの頭に、ヒューバートの掌が乗せられた。同時にキルラもまた、ラウラの膝の上に下りてくる。
「悩み事があれば、我とヒューバートが聞くぞ? ラウラが元気ないと、我もヒューバートも元気がなくなるのじゃ」
 温かくて大きな掌が、ラウラの頭を優しく撫でる。
「キルラ……。将軍」
 そっと見上げたヒューバートは、優しい表情をしていて、胸がじんとする。
 ――心配かけちゃダメだよね。
 言葉を選んで言えば、ヒューバートも嫌な気分にはならないのではと、ラウラは覚悟を決めた。
 口を開きかけたその時、
「あー、雨降ってきたよ。まったく最近の天気はすぐに変わるからホント厄介だよなあ」
 ぶつぶつ文句を言いながら、シドとイムが入室してきた。
「少佐、イムさん」
 見ればシドが言うとおり、突然の雨に全身濡れてしまっていた。
 ガーディナー家の使用人から受け取ったらしい浴布で、滴る雫を拭き拭き近づいてくる。
「小娘イムの背中拭いてやってくれ」
「あ、はい!」
 イムの濃い灰色の美しい毛が、濡れて身体に張り付いている。ラウラはイムに駆け寄って、ぽんぽん、と水分を吸い取るように拭いた。
「ありがとうございます、娘さん」
「いいえ、どこか気持ち悪いところあります?」
「首筋のところが、水が溜まっているようで少々むずがゆいです」
「ここですね」
 むずがゆいという個所を念入りに拭いていたラウラだったが、ふと、手が止まった。
 ――あ、あれ……?
「びしょ濡れじゃのう、側近も。どれ、我も側近が届かない背中を拭いてやろうぞ」
 イムの世話をするラウラを見たキルラは、自分も真似をしたくなったのか、シドに近づいていく。
「いつもと少し違うのう。おお、髪がぺしょんとしているからじゃな!」
 ふんわりとした感触のシドの癖っ毛が、濡れてボリュームダウンしている。それが物珍しいようで、キルラはシドの周りをくるくると飛ぶ。
「ちょっとキルたん邪魔だから」
「手伝ってやるとゆうている我に向かって、邪魔とはなんじゃ!」
「邪魔だから邪魔って言ったんだろ。退いてろって」
 シッシッ、と手で払う。
「邪魔じゃと……。邪魔とはこういうことを言うのじゃ!」
 邪険に扱われたキルラが、むきゃあ、と怒りをあらわにし、シドの顔に突っ込んでしがみついた。
「うぶ……ッ!」
「どうじゃ、これこそを邪魔とゆうのじゃぞ!」
「キルラ、ちょっと、何してるの……!」
 慌ててシドからキルラを引きはがそうとしたラウラだったが、その寸前で、当の本人がキルラの頭にげんこつを落とした。
「ふぎゃっ」
「少佐!」
「キルたーん、悪い子には御仕置をしなきゃなあ」
 シドの垂れ目に、不穏な色が瞬く。刹那、シドはキルラのふわふわの毛を撫でくり回した。
「こ、こしょばゆいぞやめるのじゃ側近〜〜ッ!」
「聞こえないなあ」
「う、ひゃあぁぁっ」
「少佐、ちょっとやめてくださいよ!」
「何言ってんの小娘。これは立派な躾だよ」
「いやいや、躾っていうか……!」
「だいたいおまえら誓約者がキルたんをちゃんと教育しないから……、あれ?」
 わしゃわしゃくすぐっていたシドの手が止まる。
 くすぐられ続けてぐったりするキルラの背中――正確には羽の間を、シドは凝視していた。
「これってもしかしてハ」
 シドの口から次に出る言葉が、ラウラには容易に想像できた。
「少佐!」
 すっくと立ち上がるや、シドに駆け寄り、その口を両掌で塞いだ。
「うぐっ」
 シドの口を塞ぎながらも、必死に視線で言うな言うなと懇願する。だがその手が、凄まじい勢いで後ろに引っ張られた。
「あっ!」
 ――鎖……!
 気づいた時には、背中からがっちりヒューバートに抱きしめられていた。
「シド」
 低い険呑な声が怖くて、ラウラは首を竦める。振り返ることができない。
「ああっ? 今の見てただろうが。触ってきたのは僕じゃなくて小娘! なんで僕がそんな殺されそうな目で睨まれなきゃなんないわけ!」
 ――こ、ろされそうな目って、どんな目ですか……!
 ふと、ヒューバートの腕と気配が緩む。
「ラウラに関しては感情が制御できない」
「あーあーあー、言われなくてもわかってるよ!」
 心底呆れ果てました、とばかりに、吐き捨てるようにシドは言う。
 ラウラは意を決し、ヒューバートをこわごわと振り返った。
 だがヒューバートの眼差しは普段とそう変わらない状態に戻っていて、ラウラはほっとする。
「あの、……ごめん、なさい?」
 謝るのが適当なのかいまいちわからないのだが、ヒューバートに不快な思いをさせたことは確かだから、ラウラは小さく頭を下げた。
 ちょっと困ったような、そんな表情を見せるヒューバートに、ラウラはきゅんとする。
 ――やだ可愛い、……って思ったらダメかな。
 ギャラリーがいるというのに見つめ合うふたりに、シドが盛大なため息をつく。
「つかさ、小娘何が言いたかったわけ。キルたんが羽の間にハゲをつくってるって、そんな一大事かよ」
 甘い空気が一瞬で霧散する、無残なシドの言葉だった。
「し、し、少佐!」
「にゃんと! 我にハゲがあると……!?」
 どこじゃどこじゃとキルラは慌てて振り返るが、もちろん見えるはずもない。
「ラウラ、どこがハゲているのじゃ!?」
 半ば涙ぐみながら、キルラが腕の中に飛び込んで来た。
「キ、キルラ」
「このままでは側近にハゲたんと呼ばれてしまう〜〜、それは嫌じゃあぁぁぁ!」
 うわあ、と泣き出すキルラを宥めようと、ラウラは慌てて頭を撫でる。
「換毛期ですよ」
 その時、ごくごく冷静なイムの声が聞こえてきた。
「……え?」
「換毛期。人界にもいるでしょう。寒い時期と暑い時期に毛が生え換わる生き物が」
「かんもう、き……、ですか」
「そう。わたしも、首筋辺り、生え換わり前で、毛が抜けた個所があるでしょう?」
「あ、は、はい。さっき、見えました」
「ごくたまに、生え換わりが間に合わずに毛がなくなることもありますが、これはハゲではありません。すぐに暖かい時期用の毛が生えてきます。だから小さきヴァハラ、そう泣かなくても大丈夫ですよ」
 イムの丁寧な説明に、キルラはあからさまに安堵の息をついた。もちろんラウラもだ。
 ――換毛期、だったんだ。よかったぁ……。
 膝から力が抜ける。そんなラウラを、ヒューバートは支えてくれた。
「小娘、キルたんがハゲつくったからって慌てすぎだろ」
「あの、あの少佐。少佐は簡単におっしゃいますが、その単語はあまり口にしない方がいいんじゃないですか?」
「なになに、そんなこと気にするなんて、小娘はもしヒューの髪がなくなったら魅力を感じないって言いたいわけ?」
「まさか。将軍はどんな将軍になっても、とっても素敵ですから!」
 きっぱりとラウラは断言する。
 途端にシドからは、勝手にしろとばかりの冷たい視線を受け、イムからは苦笑混じりに「よかったですね、ヒュー」と言われる。
 キルラはといえば、「うむ! ラウラはヒューバートが大好きなのじゃな!」と満足そうにうなずいた。
 ――うわうわ、わたしってば、勢いに任せてひと様の前で何言ってんの……!?
 恥ずかしくて、ラウラはぎゅっと縮こまる。
 そんなラウラを抱きしめるヒューバートの表情は見えない。
 けれど蕩けそうなほど優しく温かな気配を感じるものだから、絶対、絶対、顔を上げられないと、ラウラは頬を赤く染めながら、さらにうつむいた。

                              了




        



 ここまでお読みいただき、ありがとうございましたー。
 そろそろ猫の毛が盛大に抜ける季節だなあ、なんて思った時に思いついた話です。
 もちろんキルラはハゲたんにはならずに、夏毛に生え換わりますので。


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Comment
いつもSSありがとうございます
とても楽しく読んでいます
次も書いていただけるとうれしいです

ラウラに甘甘なヒューバートは面白くてとても大好きです
Posted by: うさぎ |at: 2013/04/01 10:41 PM








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